どうやって防ぐ? 日英比較コロナ対策②(英国人のパニック買い編)

<前回からの続き>
さてマスクはかけず、手にフォーカスして感染を防ごうとする英国人の対策とはどんなものか。

ちなみに“Catch It, Bin It, Kill It.” (ウィルスを捕まえ、適切に処理し、やっつける)というのが国民医療サービスのNHS標語だ。
これは公共交通機関でのテロ対策の標語“See It. Say It. Sorted.” (不審物を見つけたら、ソク報告。担当者が対応します) と同じくで、韻を踏んでいてキャッチーで覚えやすい。

BBCニュースのスクリーンショット。サッカー試合も中止に。


以下の3つが国の薦める代表的な対策だ。

  • まず「石鹸で手を洗い、消毒液でさらに殺菌」が基本。これはどこでも同じだろう。全国の学校でも数時間ごとに生徒が手洗いをするよう指導され、みんなで一日に何度も手洗いに向かっている。またジェル状の消毒液も手渡され、手に数滴を落としすり込むようにして消毒する。うがいについてはあまり聞かない。

  • 咳やくしゃみをする時は片腕で顔を覆う。ティッシュが間に合わず両手で顔を覆うようにしてハクションとやると、手にウィルスが付着し、それがあちこちに触れる感染が広まるからというのが理由だ。やっぱりマスクはしない。

  • 咳、喉の痛み、発熱があったら他人との接触を避ける。学校を休んだり、自宅勤務に切り替える。もちちろん新型ウィルスに感染していることが分かったら自主隔離。ちなみに単純な風邪だが大事をとって休んだ就学児を抱える私は、本日リモートワーク中。本日は撮影がないので助かっている。

ちなみに英国ではこれを機にオンライン・ラーニングと在宅ワーク率がぐっと進みそうで、ある意味投資とビジネスチャンスでもある。もちろんそういった話し合いがすでに企業で連日持たれている。

そしてパニック状態の大人を横に、元気のいい子どもたちは面白いことをやっている。
何があろうと彼らはたくましいし、新しくて面白いことを生み出す。どこまでも健全だ。

例えばこんな感じ。

  •  学校では1回20秒間の手洗いを指導されているが、ただ洗っているだけだとこれは結構長い。キッズたちはバースデー・ソング(ハッピーバースデートゥーユー♪)を歌いながら手を洗う。そのうち新曲も生まれてくるだろう。

  • 大人は挨拶のハグと握手を避けているが、キッズたちは友人と会うときに「やっほー」「ようよう!」という感じでグーを突き合わせる「フィスト・バンプ」の代わりに「エルボー・バンプ」なる方法を編み出した。つまりは手の代わりにひじを曲げてお互いのひじをコツンと合わせるというあいさつの仕方だ。大人もジョークまじりでこのエルボー・バンプをまねるようになった。

結局、マスクは登場していない。たまにマフラーやスカーフを目深に巻いて工夫している人はいる。マスクなんかしても、予防にならないよと公言する人もいる。

そして日本も英国も変わらないのは人々のパニック買いだ。

何かあるたびに トイレットペーパーが最初に消えるという現象が不思議でならなかったのだが、「ストレス時、ヒトは意味はなくても日用品を買うと心が落ち着く」という話を知り、ようやく納得。

私がいつも買い物する大手スーパーでも、薬や食料より先に、まず一気にトイレットペーパーが棚から消えている。

サイズの大きいものだけに消えるとすごく目立つ。だから「あ、うちも買わなくては」とさらに人々の購買意欲をかき立てるのだろう。いわゆるFOMO(取り残され恐怖症)だ。

ユニバーシティ・カレッジ・オブ・ロンドンのディミトリオス・ティブリコス(Dimitrios Tsivrikos、名前の日本語表記が間違っていたらすみません)博士によると、パニックは種類がありひとつは災害型パニック、もうひとつは一般的パニックと呼ばれ、トイレットペーパー爆買いは後者の典型的な例なのだという。
災害型パニックは人々がもう少し情報を握っており、自分の取るべき対策が分かっている。
一方で一般型パニックはどうするのがベストかいまいち分からず「なんとなく怖い」という不安と焦りだけが伴う。ウィルスは目に見えないから逃げるのも難しいし、ニュースではあおりまくっているし、知らないうちに人々の不安とストレスが高まっているということだ。

こういういったよくわからない不安を抱える時、人はとにかくどーんと大きくて長持ちして安心させてくれるようなものを買ってしまうのだという。

現在はもう少しシリアス度が増したせいか、私が暮らす(ロンドン)エリアではトイレットペーパー以外にも解熱剤・風邪薬などの薬品、主食系の米やパスタに朝食シリアル、非常食用のカンヅメ、冷凍野菜などが店舗から消えている。小麦粉類もゼロ。
それなのに生鮮食品やレディーメイド品、普通の食パン類、菓子類やお茶は現在のところ変わりないように見えるのは、人々が基本食材のストック用買い物でそこまで手が回らないせいなのか、それとも一つ一つのサイズが小さいので減っていても目立たず、場所もとらないので店のストックも十分にあるということなのか。まあ半々といったところだろう。

心理学者のカタリナ・ウィトジェンスは「人々のパニック状態は1ヶ月もすると収まる。冷静になるまでそれぐらい時間がかかる」と述べている。

どうやって防ぐ? 日英比較・コロナ対策 ①

昨日、仕事関連のミーティングに出かけて行ったらいつもビッグなハグで迎えてくれる人がすっと身体を離したので「おや?」と思った。もちろんコロナ・ウィルスのせいだ。

コロナ騒動は遠い国の話だからだから大丈夫、ココは島国だからと対岸の火事でのんびりかまえていた先週末までの英国民 。しかし欧州ではイタリアで状況が悪化していること、国内での感染者数の上昇、そして英保健担当閣外相ドリス氏がこの新型ウィルスに感染し自主隔離のニュースが報じられ、12日には国会で学校閉鎖に踏み切るべきか否かの討論が持たれるに至って一気にパニックが広まった。


ちなみに3月13日現在、 英国では全国的閉鎖になっていない。しかし、もちろん以前から予防対策はしつこく呼びかけている。(後日記※その後18日に行われた発表で3月20日・金曜日より保育園や私立校も含む全国の学校が一斉休校となった。しかし医療関係者や物資配達の運転手、スーパーの店員などキーワーカーと呼ばれる人たちの子どもたちを学校で受け入れるとしている。)

そんな中で思うのが、英国のマスク事情である。

手洗いを徹底するようにというのは、感染を防ぐためにどこの国でも言われていることだが、花粉症や風邪対策にはすぐマスクの日本人と違い、英国人はマスク着用にけっこう抵抗があるのだ。

これまで、英国人には「マスクをしている人=すでに危険な病気にかかっている人が拡散防止にかける」という先入観があった。この場合、医療従事者はもちろん別である。

このため英国でマスクしている人を見かけることはごく稀なのである。都心部への自転車通勤車が防塵マスクをしているのは見かけるが、これはサイクリングウェアとセットになっているから大丈夫、と思われているだけであって、町歩きやオフィスでかけていたらちょっと変な目で見られる。

また、ギャング犯罪のイメージもあり、顔を見られたくない事情のある人がマスクをするという先入観も根強い。同様の理由で、パーカーのフードをかぶったままショップ等に入店してはいけないというルールがある店も時々ある。(もちろん雨の日や寒い日は外でフードをかぶっている人は多い)

実際、昨日ランチどきの混み合うオフィス街を歩いていた時にマスク姿の人を捜してみたのだが、マスクをしていた男性は1人だけでしかも東洋人系。暖かい日だったのも関わらず、マフラーを顔にぐるっと巻いてマスク風にしていた白人男性が1人いた程度だった。(後日記:18日時点で少しは増えた気がするが、やはりたまに見かける程度)

BBCなどのニュースを見ているとアイキャッチ画像にマスク姿の人が写っているのだが、やらせか?と思ってしまうほど(そんなわけないだろうけど)。こんな事態でもサイクラー以外でマスク姿を見つけるのは至難の業なのだ。

とはいえ、バスや電車に乗れば、携帯用アルコール消毒液の匂いがどこからともなく漂い、手すりなどを触ったりバスの昇降ボタンを押す場合もセーターの袖を伸ばして直に手が触れないようにしている人が多い。暖かい日なのに手袋、しかもちょっと薄手の防寒目的ではないような形状の手袋をしている人も見かける。手から防ごう、というのが英国人の対策みたいだ。

ちなみに、電車やバスに乗りたくないので片道1時間半かけて徒歩通勤している友人がいる。

具体例・そして英国民がコロナ騒動でどんな行動をしているかについては、次回ブログに。

(わりとすぐ更新の予定です)

※後日記>18日の時点でもマスク姿はまだ稀だ。しかし数は増えて来ている気がする。もともとマスクの需要がないので出回っていないということもあるし、「マスクは医療従事者のためにとっておけ」という声も聞かれる。日本での感染者が英国に比べ少ないのは手洗い、うがい、マスクが徹底しているからなのかもしれないと感じた。